ソーラーシェアリングと農業の可能性 (連載「匝瑳市ソーラーシェアリングプロジェクト」第2回)


千葉県の北東部に位置する匝瑳市。その飯塚開畑地区でソーラーシェアリングプロジェクトが進んでいます。耕地面積は約100,000㎡、太陽光発電設備は全4.3MWに及ぶ構想で、発電事業者や農業生産者がかかわり、地域の持続的発展を目指す計画を進めています。

すでにプロジェクトは具体化しつつあります。 市民エネルギーちば合同会社による「匝瑳第一発電所/Sun Agri」(出力57kW)は2014年9月から発電開始。


そして千葉エコ・エネルギー株式会社による「匝瑳飯塚 Sola Share 第1号機」(出力55.16kW)は2016年3月から発電開始しています。それを機に2016年4月2日には、地元の関係者の方々や金融機関の方々に向けた現地の見学会も行われました。


発電と同時に耕作も進んでおり、7月には大豆の播種作業が行われました。今後、自然農法·有機栽培で在来種の大豆などを生産していきます。

プロジェクトにおける耕作は、農業生産法人Three Little Birds(スリーリトルバーズ。以下TLB)が担っています。TLBは、地元匝瑳市出身で農業を営む4人が協力し、このプロジェクトのために設立されました。

連載第2回の今回は、ソーラーシェアリングにおける農業に焦点を当て、TLBの代表社員である齋藤さん、佐藤さんにお話を伺いました。

7月、大豆の播種を実施


「匝瑳市ソーラーシェアリングプロジェクト」で生産を予定しているのは大豆。

大豆というと一般的に、枝豆用の品種なら5月には播種(種まき)を終え、8月の暑い時期に枝豆が穫れます。そのまま大豆として成長させると11月には収穫、という流れが多いそうですが、今回の播種は7月6日と少し遅めです。

それは今回栽培する在来種の大豆が遅まきの品種であることと、自然農法·有機栽培だからです。害虫の多い8月と、虫が好む枝豆のできる時期が重なってしまうと、虫に食われてしまうので、1ヶ月ほど播種~収穫の時期をずらす必要があるのです。

(逆に言うと、8月に収穫される枝豆は、農薬を使って虫がつかないようにしたり虫を殺したりしている可能性が高い、ということです。)

播種を行った7月6日は時折晴れ間がのぞく曇り。午前中早い時間から作業は始まりました。

メンバーはTLBの社員である寺本幸一さん、齋藤超(こゆる)さん、佐藤真吾さん、椿茂雄さん。それぞれ地元匝瑳市でご自身の畑を持ち、農業をされています。


播種を行うのは「匝瑳第一発電所/Sun Agri」と「匝瑳飯塚 Sola Share 第1号機」のソーラーパネルの下。ここに千葉県の在来種であるコイトザイライを播きます。


コイトザイライは千葉県内でも失われかけていた在来種で、有機農業の先人たちが地域固有のタネの保存、ひいては食文化の継承のため、大切に守り育ててきた品種です。今回播いたタネは、有機農家のタネの交換会で譲り受けました。

トラクターは今回、TLBメンバーの寺本さんが所有するものを使用しました。


耕運機の先に取り付けた播種機は、今後の耕作地拡大を見越して今回購入しました。「一定の間隔で安定して播くことができるので便利ですね」(齋藤さん)。


播種機を初めて使用するということもあり、今回はTLBの皆さんが揃い、使用感を確かめながらの作業となりました。


播種の際、重要となるのがツメの深さ。大豆の場合、深く耕す必要はないというのが一般的に言われていることですが、実際には耕地の土質によって異なるため、ある程度は経験で判断しなければなりません。長年この土地で農業を営んできた椿さんのさじ加減で、ツメの深さを決めました。


太陽光パネルまでの高さは十分。低くても2.5mほどなどでトラクターなら問題ありません。発電設備の周りのスペースにも余裕があったため、切り返しも可能でした。トラクターを接触させてしまわないように、支柱の周りは避けて播種します。


播種作業自体は1つの発電設備あたり1時間程度で終了しました。


出力50kW程度のソーラーシェアリング設備だと広さは約1,100㎡。この程度なら播種機を取り付けたトラクターでも、種まき機(ごんべえ)でも、要する時間はあまり変わりません。


今回の播種作業では、ソーラーシェアリング下での播種のほか、「匝瑳第一発電所/Sun Agri」の隣にある耕地を使って、全国各地の大豆の在来品種の播種も行いました。


さて無事に播種作業も終わり、順調に芽が出ることを祈ります。。

発芽 しかし一部播き直しも


播種から約2週間後。「匝瑳第一発電所/Sun Agri」の大豆は順調に育っています!

しかし「匝瑳飯塚 Sola Share 第1号機」の方は問題発生。大豆の芽自体は出ているのですが、同時にかなりの数の雑草も生えてしまっています。雑草が生えてきているのは、西側の区画が中心でした。


日照も設備も「匝瑳第一発電所/Sun Agri」とはほぼ同じ。なのに「匝瑳飯塚 Sola Share 第1号機」のしかも特定の区画だけ雑草が?

佐藤さん曰く「もともとその区画には酪農で使った土が埋められていて、中に雑草の種も混ざっていたのでは? 本来であれば土を発酵させて発芽しないようにするものだが、それが残ってしまっていたのでは。。」とのこと。

このままでは雑草が大豆の生育に悪影響を及ぼします。数日後、種を撒き直して対応しました。初めて耕作を行う土地では、予想外のことが起こるんですね。。


播き直し後、大豆は順調に生育しています!

安心して次の世代につなげられる仕組み

さて、TLBのメンバーはどのような思いでソーラーシェアリングプロジェクトにかかわるようになったのでしょうか?代表社員の齋藤さんと佐藤さんにお話を伺います。


齋藤さんはみやもと山という屋号で、地元である匝瑳市で有機農業や体験型農業を営んでいます。

佐藤さんも匝瑳市の出身。自然農法・有機栽培によるネギの栽培や、日本酒造りの米の栽培を手がけています。

それぞれご自身の生業がある中でのTLBの設立。きっかけは市民エネルギーちばによる働きかけでした。

「最初のミーティングは2015年11月でしたね。市民エネルギーちばさんから『とにかく農家さんを集めて話がしたい』という要望があり近隣の有機農家さんにも声を掛けて。第2回、3回と回を重ねるごとにミーティングに参加する面々も決まってきましたね。ソーラーシェアリングを事業として進めていく仕組みを聞き『これがうまくいけば本当にいい。安心して次の世代につなげられる仕組みかもしれない』と思いました」(齋藤さん)

その「仕組み」ですが、まず土地を借りて太陽光発電を設置し売電事業を行うのが売電事業者(千葉エコ・エネルギーや市民エネルギーちば)です。売電収入はこの発電事業者が得ます。

ただ、ソーラーシェアリングは耕作が義務付けられている(1年に一回農業委員会に耕作状況を報告する義務もある)ため、持続的に耕作を続けることが必要です。

そこで本プロジェクトでは、発電事業者自身が耕作を行うのではなく、地元に根ざした農家の方が作る農業生産法人が耕作を担う「仕組み」を構想しました。農業生産法人は耕作の受託料として、発電事業者から年間8万円(「匝瑳飯塚 Sola Share 第1号機」の場合)を受け取ります。その農業生産法人がTLBというわけです。耕作面積に応じて、受託料は増えていく仕組みになっています。

「私たち農家が新規で耕作を始めようとすると、新たに土地を借りなければなりません。土地を借りれば賃料も固定資産税もかかる。それを発電事業者が負担してくれるということだけでも大きいですよ。」(齋藤さん) 「50kWの発電設備下の受託料として年間8万円が高いのか安いのかは、正解がないというか、正直分からないですね。全国的にも事例がなく、誰もやったことのないことをやろうとしているわけですから。ただ、現在の規模は小さいものですが、将来的なプロジェクト全体の規模は約10町歩(約100,000㎡)ですよね。そうなると年間数百万円の受託料になるわけで、そこまで広がればさまざまな事業の展開が考えられます。」(佐藤さん)

「無農薬」で「千葉在来」の大豆の価値


今後発電設備が広がっていくと同時に、耕作面積も広がっていく見込みです。現在はそれぞれご自身の農業を営んでいる4人のメンバーが作業されていますが、やがて人手が足りなくなっていくことが予想されます。

「大豆は一反歩にかかる時間はすごく少ない作物ですが、さすがに10町歩になってくると今のメンバーではカバーしきれません。TLBの耕作をメインでやってくれる人が必要になりますね。もちろん作業時の人手も不足してくると思うので、例えば新規就農の方に手伝ってもらうような、何らかの仕組みを作らなければいけません。あとは選別など作業を行う作業場も建てる必要が出てくると思いますし、収穫機なども購入しなければならないでしょうね。」(佐藤さん)

将来、TLB専任の社員が働いている頃には、かなりの量の大豆が収穫できているのでしょう。それも無農薬の、千葉県の在来種の大豆です。こうした特徴をもつ大豆の販売方法としては、どのような計画があるのでしょうか? 齋藤さんは「絶対売れますよ」と自信をのぞかせます。

「例えば小さい醤油屋さんなどは原料のプレミア路線を持ちたがっているんですよ。『無農薬の、千葉の在来種で仕込んだ醤油』ということならブランド価値が高まりますから、たとえ国内需要が少なくても海外でヒットするのではないでしょうか。そのような醤油メーカーに直接販売することは一つ考えられますね。」(齋藤さん)

直接販売を模索する背景には、国産大豆は輸入大豆と価格的に勝負ができないという現状があります。特に大豆や麦は、米のように関税で守られているわけではありませんから、付加価値をつけ通常の流通ルートとは異なるラインで販売する必要があります。

「私は今、自分の畑で年間1,500kgくらいの大豆を収穫しています。800kgは味噌に加工して販売し、残りは種としてまたは大豆として販売しています。このくらいの規模だと私がやっているような販売方法になるのですが、今回のプロジェクトが進んで、収量が多くなれば、次のアイデアが考えられます。例えば、全体で大豆を15tくらい穫れるようなスケールになれば、豆乳をしぼれるようになると思いますし、豆腐だってできそうですよね。」(齋藤さん)

「そのとき重要なのが大豆の品質なんです。クオリティが高くなければ価値を認めてもらえない。品質の良い大豆を作りたいと思ったときに、ソーラーシェアリングによってある程度収入が保証されているからこそ、時間と手間がかけられるという側面はあると思うんですよね。」(佐藤さん)

佐藤さんはソーラーシェアリングと付加価値の高い作物の栽培は相性が良いと語ります。同時に、今回のプロジェクトにおいては飯塚開畑地区という土地の事情も、農業の支えとしてのソーラーシェアリングに深く関係しているといいます。

「飯塚開畑地区に耕作放棄地が多いのはやはり理由があって、水はけが悪く、農業をする上ではあまり良い土地ではないからです。もしここが優良地なら今頃、柑橘系の作物の一大農地になっていると思いますよ(笑)。農業だけだと厳しい面もあるのかもしれませんが、ソーラーシェアリングを入れることで、付加価値の高い大豆を栽培していくめどが立つんです。大規模なソーラーシェアリングプロジェクトは、全国的に見れば新しい取り組みかもしれませんが、こと飯塚開畑地区においては『なるべくしてなったんじゃないか』とも感じています。」(佐藤さん)

持続的に耕作を続けていける体制を


農業生産法人と発電事業者がタッグを組み、着実に進みつつある「匝瑳市ソーラーシェアリングプロジェクト」。それぞれの強みが重なり合うことで、新たな価値が生み出されていきます。

「発電事業者にとっては、田舎で大規模にソーラーシェアリングをやるといっても耕作を担保できないと始められないと思うんです。そこが発電事業者の地元か、自身で耕作ができるのであれば話は別ですが、基本的に発電事業者は耕作者を必要としているのではないでしょうか。 一方、私たち農業生産者がソーラーシェアリングを始めようと思っても、すぐには始められないですよね。1千万円単位のお金を借りるのが難しいし、発電事業のノウハウもない。しかし、今回のソーラーシェアリングプロジェクトの方法なら挑戦できるんです。 彼らは私たちにない「つながり」がありますよね。たとえば市民エネルギーちばの太陽光発電はパネルオーナー制を採っていますので、私たちの無農薬大豆が収穫できたときに、オーナーの皆さんに紹介できるのではないかと考えています。私たちにない営業力というか、販売先のチャネルに期待しています。」(齋藤さん) 「超くん(齋藤さん)が言うように、発電事業は、今ある発電所では千葉エコ・エネルギーや市民エネルギーちばが担っていて、それは私たちにはハードルが高いことです。やはりプロジェクト全体を安定的に事業化してほしいと思いますね。TLBもそれに応えていきたいので。『がんがんやってください』という思いです。 それに、一緒にやっていくパートナーとしてとても信頼しています。環境への負荷をおさえられる自然エネルギーの価値や、地域の持続可能性、農業の未来について、自然と話せますし。単純に『話しやすい』というのは良いことですね。」(佐藤さん)

今後、発電設備が増え、耕作面積が広がっていくとともに、フルで働くことができる人を雇用したり、設備を整えたりするなど、TLBという法人も大きく変わっていくことになります。そんな中、描くビジョンは明確です。

「発電は最低でも20年は続きます。TLBとしては、飯塚開畑地区で、持続的に耕作を続けていくことができる体制をつくりたいですね。仮に10年後、私たちがいなくなったとしても、耕作を担っていけるような法人にしていきたいと考えています。」(佐藤さん) 「TLBとしてももちろんですが私個人としてのビジョンもあります。それは、ここ匝瑳の野菜を集めて流通網を作るということ。もちろん農協など通常のルートはあり、それでも一定の収入は得られるのですが「稼ぐ」ことができているかというとそうではない。やはり独自の販路を持つことが重要です。 大きな生産組合なんかはスーパーと直接取引していますが、零細農家だとそれは厳しいんですよね。そこで、各農家がつくる野菜を集めればまとまった量になりますし、匝瑳の野菜ブランドとして売り出せば魅力も高まると思うんです。ブランドの特色としては「美味しい」というのはもちろん、例えば電気自動車で配送できれば「CO2を使っていない」といった価値を訴求できます。」(齋藤さん)

明確なビジョンを持つ齋藤さんと佐藤さんらTLBのメンバーによって順調に耕作が続けられています。全国的にもめずらしい、発電事業者と農業生産者が連携するプロジェクトの最前線では、新たな挑戦の中で試行錯誤する人の姿がありました。ソーラーシェアリングプロジェクトはまさに、地域の未来を創っている最中です。

#ソーラーシェアリング #営農型太陽光発電 #千葉エコエネルギー #ThreeLittleBirds

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